アクセス
事務所の紹介動画
電話
企業法務

【法律コラム】パワハラ編④

 今回は、パワハラ防止に向けて会社でどのような取り組みが求められているかを見ていきます。
 2020年(令和2年)6月1日から実施強化された「職場におけるハラスメント防止対策」です!
 (A~Dまで、4類型、10項目あります!)

  自社のパワハラに対する方針を周知する活動とパワハラ自体を啓発する活動ですが、大きく2つあります。
 ㋐ 職場におけるパワハラとはどんなものか、パワハラの内容や自社のパワハラ防止の方針を明確化し、全従業員に周知・啓発すること。
 ㋑ 職場におけるパワハラに係る言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

 具体的には、
  ・就業規則等にパワハラに関する規定、特に、パワハラを行った者は懲戒処分の対象となる旨を記載する、
  ・社内誌、パンフレット等にパワハラに関する会社の方針を掲載し、従業員に配布する
  ・パワハラに関する研修・講習を実施する

 ということです。
 就業規則等にパワハラに関する規定を設けているか確認してみてください。

 ㋐ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。
 ㋑ 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、広く相談に対応すること。

 が求められています。窓口は、外部機関でも問題ありませんが、設置するだけではなく、実際に機能しなければなりません。
 窓口を機能させるためには、
  ・相談を受けた際の対応手順を決めて、必要に応じて他部署と連携して対応ができるよう事前に整備する
  ・相談担当者に対し、相談を受けた際の対応について研修を行う
  ・相談時の注意点などを記載したマニュアルや相談シートを作成し、それに基づいて対応する

 ということが大切です。

 対策を講じていてもパワハラが発生してしまった場合、相談があった場合は、速やかに対応することが求められます。
 その際の具体的な手順は、次のとおりです。
㋐ 事実関係を迅速かつ正確に確認する。
 調査担当者を決め、調査を実施します。調査担当者は、客観性を担保するためにも複数名で担当する方が良いでしょう。被害者だけでなく、加害者、目撃者や関係者からヒアリングを行い、正確な事実関係の確認に努めましょう。
また、被害者がどういった状態であれば安心して仕事ができるのか、加害者の行動の背景にはどのような事情があるのか等も確認しましょう。
 調査後、パワハラの有無を判断し、調査報告書を作成します。報告書は、会社内で処分を決定するうえでの重要な資料となりますし、同時にパワハラ防止対応の記録にもなります。
 後述しますが、これら情報の取り扱いには十分に注意します(当然社外秘ですし、ハラスメント当事者であってもみだりに開示しないようにしましょう。)。
㋑ 被害者に対して適正な配慮措置を行う。
 パワハラがあったと判断される場合はもちろん、判断が難しい場合であっても、被害者には適切な配慮を行うべきです。セクハラと違い、パワハラは単純に被害者の言い分だけで認定されるものではありませんが、加害者の言動等により、被害者の就業環境が安心できない状況にあることは間違いありません。
 被害者に対する配慮方法としては、・加害者を引き離すための部署異動、・加害者への注意や指導、・被害者のメンタルヘルスの不調への相談対応、・被害者が休業を余儀なくされた場合、被害者が希望するときは、復職に向けた支援等があります。
 必ずしも被害者が希望する処分を行えないときがあります。被害者の感情を考慮するためにも、被害者に対して緻密なカウンセリングを行うことをお勧めします。
㋒ 加害者に対して適正な処分・措置を行う。
 パワハラがあったことが確認できた場合は、就業規則等の社内のルールに基づいて加害者へ必要な処分を行う必要があります。処分を決める上で、次のことをポイントとすると良いかもしれません。
 ・パワハラ行為の内容、・パワハラ行為の頻度、期間、常習性、・パワハラの被害者の数、・パワハラによる被害の程度、・加害者の謝罪や反省の有無、・加害者の過去の懲戒処分歴の有無、
 加害者が本当に処分の対象となるのか、どの程度の処分が適切なのか等を慎重に検討する必要があります。
 パワハラがなかったとしても、加害者のどの行動がパワハラに該当するとされたのか、今後どのように対応すべきか等もきちんと指導する必要があります。
 安易に被害者の話だけで加害者の処分を決めても後々トラブルに発展する可能性がありますし、被害者に何らかの落ち度がありパワハラと認定されなくても加害者の行動を改めなければ、再び被害者との間に問題が生じることになるでしょう。
㋓ 再発防止に向けた措置を講ずる。
 調査の結果、パワハラがあったとしても認められなくても、再発を防止するよう取り組まなければなりません。
 改めて従業員に周知し、研修や講習を行うだけでなく、管理職向けにパワハラ事案が発生したことを周知し注意を促すことも大事です。また、被害者に対してカウンセリング等実施しメンタル面を含めて経過をフォローし、加害者に対しても研修や定期的な面談を行っていきましょう。

 パワハラに関する相談・対応の中で知り得る情報は、個人のプライベートな情報も含まれます。このような個人情報が簡単に漏れると分かると被害者は素直に言い出せなくなります。
 相談の対応、事実確認等の一連の対応で知り得た関係者の㋐プライバシー情報には十分な注意を払うことが必要です。プライバシー保護に関してマニュアルを作成し、日頃から研修を実施してプライバシー保護に関する意識を高めましょう。また、プライバシー情報には十分に配慮することを従業員に周知し、相談しにくい状況を作り出さないようにします。
 また、パワハラを相談したり、調査に協力したことで関係者を㋑不利益に扱ってはいけません。不利益に扱われてしますとなると、問題が大きくなるまで誰も相談しないからです。せっかく設置した窓口も機能しません。
 従業員に安心して働いてもらう就業環境を整えること・改善することが大切です。

 冒頭でも述べたように、A~Dのパワハラ防止対策は、あらゆる企業で義務として取り組まなければならない事項です。
 しかし、全てをいち企業だけで取り組む必要はありません。就業規則の変更や専門的な研修は、やはり専門家に見てもらうのが良いでしょう。機微に渡る対応が必要なヒアリングやカウンセリング自体、外部機関に依頼するのもひとつの手です。
 自社だけでどこまでできるのか、どこに何を頼むのか、どうすれば防止できるのか、
 色々な角度から経営を検討することで、企業内のハラスメントを防止できるのだと思います。

関連記事

PAGE TOP