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【相続コラム②】自筆証書遺言と公正証書遺言の違いについて

今回は、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の違いについて、解説させていただきます。

まずは、両者の違いについて、簡単に表にまとめます。

自筆証書遺言公正証書遺言
作成方法遺言者が自筆で作成公証人が作成
証人の有無必要なし証人2人の立会いが必要
費用基本的に無料手数料が発生する
保管場所遺言者が決めた場所
または法務局
原本は公証役場
正本等は遺言者が保管
検認の有無必要
(法務局で保管の場合を除く)
不要
無効になるリスク高い低い

以下、細かく解説いたします。


(1) 作成方法・証人・費用


● 自筆証書遺言
 自筆証書遺言は、基本的に遺言者本人が全文・日付・氏名を自筆で書いて押印することで、作成します。
 代筆によるものや全文をPCで作成したものは、遺言としての法律的な効力を持ちません。ただし、財産目録については、別紙として添付する場合、署名・押印があれば自筆でなく代筆・PCによる作成が認められています。
 自筆証書遺言を作成するにあたっては、証人は必要とされず、作成する費用も基本的にかかりません。

● 公正証書遺言
 公正証書遺言は、遺言者本人が遺言の内容を口頭で公証人に伝え、公証人がその内容を文章にまとめます。公正証書を作成する際には、証人として2名以上の立ち会いが必要です。
 公正証書遺言を作成するためには、公証人に手数料を支払う必要があります。手数料は、公証人手数料令という政令で規定されており、相続財産の金額に応じて定められています。

(2)保管場所


 自筆証書遺言と公正証書遺言では保管場所が違います。2020年(令和2年)7月から、自筆証書遺言を法務局で保管できる制度(自筆証書遺言保管制度)が創設されました。

● 自筆証書遺言
 自筆証書遺言の保管場所は、遺言者本人で決めることができます。自宅に保管しておいたり、信頼できる第三者に保管してもらったりと、自由に決めることができます。
 しかし、自由に決められるがゆえに、保管場所を忘れてしまったり、相続人が遺言書を発見できなかったりというリスクもあります。また、遺言書の書き換えや偽造されるリスクもあるでしょう。
 なお、2020年(令和2年)7月の改正相続法の施行によって自筆証書遺言保管制度が利用できるようになりました。自筆証書遺言保管制度を利用すると、遺言書の原本を法務局で管理してもらうことができます。改ざんや紛失のおそれがないことにくわえ、あらかじめ希望すれば、死亡時に遺言があることを1名に通知することも可能です。

● 公正証書遺言
 公正証書遺言の原本は、公証役場に保管されます。そのため遺言書の紛失・変造・偽造などのリスクは、ほぼないといえます。
 遺言者には遺言書の正本が交付されますが、保管場所を忘れたり紛失したりしても、原本が公証役場で保管されているため問題は生じないでしょう。

(3)検認の有無


 検認は、家庭裁判所が遺言書の存在と内容を明確にする手続きです。
 検認が必要なケースにもかかわらず、検認を経ずに遺言書を勝手に開封したり、遺言を執行したりした場合は、5万円以下の過料に処される可能性があります(民法1005条)。

● 自筆証書遺言
 自筆証書遺言は、原則として家庭裁判所の検認手続きが必要になります。
 自筆証書遺言を発見した相続人や遺言の保管者は、相続開始後、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に遺言書の検認を請求しなければなりません。ただし例外として、前述した自筆証書遺言保管制度を利用して、法務局で保管していた遺言書については、検認手続きは不要です。
 なお、検認はあくまでも、遺言書の偽造や変造を防止することが目的であり、遺言書の有効・無効を判断する手続きではありません。万が一、検認を経ずに開封等をしてしまったとしても、遺言自体が無効になるわけではありません。

● 公正証書遺言
 公正証書遺言の場合、検認手続きは不要です。

(4)遺言書が無効になるリスク


 自筆証書遺言と公正証書遺言を比較すると、自筆証書遺言のほうが無効になるリスクは高いといえます。

● 自筆証書遺言
 自筆証書遺言は、簡単に作成できる反面、厳格な方式に従って作成することが要求されます。たとえば日付の記載や押印が漏れている、特定できない日付が記載されているなど、形式面での不備があれば、せっかく作成した遺言書は無効になってしまいます。
 また、遺言者が認知症であったなど、遺言書作成時の意思能力が問題になったときに、自筆証書遺言は無効と判断される可能性が高くなりやすいと考えられます。

● 公正証書遺言
 公正証書遺言は公証人が作成するので、形式面の不備は生じにくく、自筆証書遺言と比べて無効になるリスクは低いといえます。
 遺言作成時の意思能力が争われた場合ですが、基本的には遺言書の種類にかかわらず個別の事案ごとに検討されることになります。
 しかし、公正証書遺言については公証人という公正・中立な立場の第三者と証人2名が作成にかかわっているという点で、意思能力があったと証明できる可能性が自筆証書遺言よりは高いと考えられます。

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