企業法務

【法律豆知識】役立つ契約書 なぜ契約書を作成するのか。

 会社を経営していればもちろんのこと、個人でも、社会生活を営む中では様々な契約書にサインをすることが求められます。

 例えば、雇用契約書、土地建物賃貸借契約書、売買契約書、金銭消費貸借契約書、業務委託契約書などです。

 一方で、「契約は口頭でも成立する」とも言います。
 口頭でも成立する契約に、なぜ書面を作成するのでしょうか?

1 契約書とは?

 契約書とは契約が締結されたことを証明した文書のことをいいます。
 民法には「契約自由の原則」というものがあり、また法令で特別に定められた場合を除いて、契約書を作成しなくても、契約自体は成立します。

民法第521条(契約の締結及び内容の自由)
1 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。
2 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。 

民法第521条(契約の締結及び内容の自由)

  

民法第522条(契約の成立と方式)
1 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

民法第522条(契約の成立と方式)

 522条の2項にあるとおり、一部の契約については契約書等書面交付が義務づけられていますが、通常、一方が申込み、もう一方が承諾したら、それで契約は成立します。
 例えばスーパーでのお会計は「売買」という法律行為ですが、契約書を取り交わしたりしません。購入の度に契約書を作成していては時間がかかりすぎてしまいます。

2 契約書を作成する理由

 法令に特別の定めがある場合を除けば契約書を作成しなくても口頭で契約は成立します。しかし、発注書や受注書、雇用契約書、合意書など、実に様々な契約書が作成されています。
 なぜ、契約書を作成するのでしょうか?

 契約書には次のような機能があります。

 契約書の作成は、契約内容を理解し、取引するかどうかを熟考できる良い機会となります。特にビジネスの場面では、契約内容を見返すことで、その取引における利益とリスクを慎重に判断できます。
弁護士など法律の専門家にチェックしてもらうこともできます。

 契約書を作成することで、契約内容が明らかになり、「言った、言わない」という紛争を予防することができます。契約書に記載することで、相手方の認識と相違がないか、誤解がないかを確認することができ、その後トラブルが発生したときは、契約書に書かれたことを拠り所として、交渉することが可能です。

 契約書は、訴訟において、もっとも重要な証拠となります。
 通常、契約書には、署名または押印がなされます。このような署名または押印がなされた契約書は、民事訴訟法上、 「真正に成立したもの」と推定されます(民事訴訟法228条4項)。そのため、契約書に定められたことが訴訟で重視されるのです。
 (締結した契約書と違う内容であったことを証明することは不可能ではないですが、ハードルは高くなります。何で変わったのかを示す資料をたくさん出すことになります)。

 このように、契約書は自分が今から何をしようとしているのだろう?と行動を見直すことができ、将来発生するかもしれないトラブルを回避するときの大切な資料になります。しかもその証拠能力は極めて高いのです!

  特に会社において、大事な取引の局面では、契約書を作成しておくことをぜひお勧めします!
  個人においても、大きな金額が動くようなときは、契約書を作成し、よく内容を見直すことが大事です。

関連記事

PAGE TOP