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【法律コラム】労働条件の明示事項に追加項目が!

2024年4月1日から変更された、
労働者に明示すべき労働条事項

 労働基準法施行規則と「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(平成15年厚労省告示)」の改正が令和5年3月30日に公布されました。これに伴い、令和6年4月1日より労働条件の明示事項変更などが施行されます。

 重要なポイントは、以下のことを労働条件として明示すること、です。
 ・従事すべき業務・就業場所の変更の範囲
 ・有期労働者契約を更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限等)

 これまでは、業務内容の変更や就業場所の異動の有無・雇止めの基準が、求人広告や就業時の労働条件通知書に記載されていなかったので、配転命令の拒否や更新の上限制限などの労使間でのトラブルが発生していたためです。
 「事務員で採用されたはずなのに、力仕事をしなければならない」
 「就職直後は研修などが福岡であったので福岡で働けると思ったら、熊本の支社異動を命じられた」
 「求人情報では“更新があり得る”とだけ書いてあって、いきなり更新に上限があるので次回更新しないと言われた」
 というような「そんなの聞いてない!!」な事態を防ぐために、今回の改正によりあらかじめ明示して知らせておこう、となりました。

 厚労省は、改正規則に則った「労働条件通知書」を例示しています。これをもとにポイントを解説していきます。

https://tomari-law.com/wp-content/uploads/2024/04/労働条件通知書(モデル).pdf

 ちなみに、既に雇用している・労働契約を締結している労働者に対しては改めて労働条件を明示したり、労働契約を締結し直す必要はありません。
 但し、現在就業している有期労働者に対しては契約の更新時に改正ポイントを含めた労働条件を明示する必要があります。
 もちろん、無期・有期に関係なく、今後雇い入れる労働者に対しては就業時に改正ポイントを含めた労働条件の明示が必要です。

 厚労省は、「今後の見込みも含め、その労働契約の期間中における就業場所や従事すべき業務の内容の変更の範囲のこと」を想定しています。 通知書モデル例で分かるように、「雇入れ直後」と「変更の範囲」を記載する必要があります。

 例えば、雇入れ時は経理で入ってもらって、そのうち人事法務まで任せたいと考えている場合は、

         (雇入れ直後)経理     (変更の範囲)法務の業務

 などと記載します。

 雇入れ直後は本社勤務だけど、支店にも異動してもらう可能性がある場合は、

         (雇入れ直後)本社     (変更の範囲)会社の定める事業所

 などと記載します。育児・介護などで配置転換の限定制度がある場合、その旨を記載しておくといいでしょう。

 将来にわたって就業場所が変わらない場合や業務の変更がない場合は、(変更の範囲)に「変更なし」や「雇入れ時に従事すべき業務と同じ」と記載して構いません。

  有期労働契約の場合で通算契約期間または更新回数の上限がある場合は、「内容」や「契約更新の基準」を記載する必要があります。

        (例) 契約の更新 有(契約期間満了時の業務量、勤務成績により判断)
           通算契約期間は4年を上限とする。

 というように記載します。

 労基則改正に伴い「職業安定法施行規則」も改正されています。これにより、今まで説明した改正のポイントは、労働条件通知書だけでなく、求人広告にも明示する必要があります。
 求人広告にも明示する事項が増えますので、広告スペースが足りなくなるということが考えられます。このような場合は「詳細は面談時にお伝えします」と記載し、別のタイミングで労働条件の一部を明示することも可能です(面接など求職者と最初に接触するまでに、求職者に対して労働条件を明示する必要があります)。

 労働条件を労働契約締結時に明示しないことは、労働基準法違反にあたります。労働条件を明示しなかった場合、 6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます。

労働基準法第15条(労働条件の明示)
 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

労働基準法

労働基準法第120条 次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
一 第十四条、第十五条第一項若しくは第三項、第十八条第七項、第二十二条第一項から第三項まで、第二十三条から第二十七条まで、第三十二条の二第二項(第三十二条の三第四項、第三十二条の四第四項及び第三十二条の五第三項において準用する場合を含む。)、第三十二条の五第二項、第三十三条第一項ただし書、第三十八条の二第三項(第三十八条の三第二項において準用する場合を含む。)、第三十九条第七項、第五十七条から第五十九条まで、第六十四条、第六十八条、第八十九条、第九十条第一項、第九十一条、第九十五条第一項若しくは第二項、第九十六条の二第一項、第百五条(第百条第三項において準用する場合を含む。)又は第百六条から第百九条までの規定に違反した者

労働基準法

 これを機会に自社の労働条件通知書や求人広告の記載事項を見直してみてはいかがでしょうか???

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